中医学・後世派漢方とは?
中医学・後世派漢方の理論は、長年の臨床経験に基づいて体系化されてきた医学です。
中医学・後世派漢方では、生命活動の基本的な要素として「気・血・津液・精」を重視し、過不足や流れの異常が病気の原因となるというシンプルな考え方、そして臓腑理論や病因病機、また弁証論治と呼ばれる患者さんの状態を様々な情報(問診、舌診など)から総合的に判断し(弁証)、その判断に基づいて治療方針を決定する(論治)という流れを理解することで、自然と体全体のバランスや繋がりを意識出来るようになります。
後世派漢方に関しては、日本の後世派漢方医学の基礎を築いた室町時代の名医・田代三喜(たしろさんき)先生のエピソード、先日の勉強会で少しお話ししました(足の腫物のお話しです)
これから数回にわたり、中医学・後世派漢方の基本をお伝えしていきます。宜しければ、勉強会の復習やまとめにもご利用ください。
まずは「証」に関して、全体像を捉えてください

以下の縦軸は<どこで>、横軸は<何が><どうした>、今回は<どうした>の中の「不足」の場合を表しています。
気虚 | 陽虚 | 血虚 | 陰虚 | |
表 | 衛気虚 | ー | ー | ー |
裏: 肝 | ー | ー | 肝血虚 | 肝陰虚 |
裏: 心 | 心気虚 | 心陽虚 | 心血虚 | 心陰虚 |
裏: 脾胃 | 脾気虚 | 脾陽虚 | ー | 胃陰虚 |
裏: 肺 | 脾気虚 | ー | ー | 肺陰虚 |
裏: 腎 | ー | 腎陽虚 | ー | 腎陰虚 |
これに加えて、「何が原因で今の状況になったかという経緯、そして今後どうなっていくのか?」という「病因病機」まで考え併せていくことで、根本的な改善に繋がっていきます。
後世派漢方とは、室町時代末期から江戸時代にかけて、中国の金元時代の医学、特に朱丹渓(しゅたんけい)の学説を中心に取り入れて発展した日本の漢方の一派です。
それまでの日本の漢方の主流であった、古代の中国医学の古典(『傷寒論』や『金匱要略』など)を重視する古方派に対して、後世派漢方では実際の臨床経験に基づき、新しい視点を取り入れています。
★ 後世派漢方の主な特徴 ★
※ 朱丹渓学説の中心的な考え方で、体内の陰液(津液や血・精など体を潤すもの)が不足し、相対的に陽気(熱エネルギー)が過剰になる「陰虚火旺(いんきょかおう)」という病態を重視しました。この病態に対して陰液を補い、過剰な熱を冷ます「滋陰降火」の治療法を多用しています。
※ 古方派が比較的少数の生薬を組み合わせるのに対し、後世派はより多様な生薬を病態に合わせて用いています。
※ 食事の重要性を強調し、病気の治療や予防に食養生を積極的に取り入れています。