青葉を渡る風も爽やかに感じられる季節となりました。
街が若葉色に染まる中、神社仏閣の境内や公園を歩いていますと、足元に『赤色や赤茶色の葉』が目に留まることがあります。

サクラが散り、春もそろそろ幕を閉じようとしているこの時期に、なぜこれほどの赤い葉が?ふと見上げれば、そこにはトトロが暮らしているかもしれない巨木・クスノキCinnamomun camphoraが、明るい光を浴びながら『世代交代』を繰り広げていました。


樹木には主に葉が一年中ついている常緑樹と、モミジやサクラなど一年の中で葉の無い時期がある落葉樹の2つのタイプがあります。※例外的に「半常緑」のような樹木もいますが・・・
クスノキは常緑樹なのですが、常緑樹とはいえ決して葉を落とさないわけではなく、実は少しずつ新しい葉に入れ替わっています。常緑樹の種類により葉を落とすタイミングは異なりますが、クスノキの場合、上記の画像のように古い赤色の葉を落としつつ、同時に新しい緑色の葉を出す時期が毎年4月~5月なのです。そのためクスノキが裸(笑)になることはなく、いつも葉がついているように見えるというわけです。

数日で、後ろのような黄緑色の葉に変わります。
クスノキのような常緑樹を眺めていますと、落葉樹のように一度にすべての葉を脱ぎ捨てるのではなく、常緑樹として一年中まるで同じ姿で日常を送っているかように見えても、それぞれの樹木は「動的なアップデート」により確実に自らを更新するシステムを持っている逞しさに目を奪われます。
枝先をよく見れば、生まれたての新芽の黄色や赤茶色の柔らかい葉、現役の濃い緑の葉、そして役目を終えて赤く染まった硬めの葉……。三つの世代が一本の木に同居し、絶え間なく入れ替わっていくその姿は、まるで『走りながら自分を作り替えていく』という前向きなバトンタッチの知恵を、私達にさりげなく教えてくれているような気がします。

そういえば、「胡蝶の夢」の説話で有名な荘子先生は「吐故納新(とこのうしん)」という言葉を残され、荘子先生の影響を強く受けていたと思われる貝原益軒先生の養生訓を紐解けば、健やかさの秘訣は「陳謝(ちんしゃ)」、つまり『巡り』にあると説かれています。

江戸の養生法では、古いものを手放すことを『謝す』と呼んでいました。クスノキは4月~5月にかけて、まだ緑を保っている葉であっても、次世代の芽が伸びてくれば、役割を終えて赤く染った葉に『謝して(お礼を言って)』、潔く送り出します。これは益軒先生の視点によりますと「新しきを迎えるために、古きを謝す」という、極めて理にかなった流れかと思います。
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(^^♪ 東洋医学には、「気」が巡らず、体のどこかに溜まりますと「滞り(邪)=体内に古いものが固まって動けない、まるで便秘のような状態のイメージ」となり、それが病の原因の一つになるという考え方があります。
クスノキが葉を入れ替えるように、私達も「古いものは手放し、今あるものを維持しながら、常に一部を更新して巡らせていく」ことが理想的な養生法なのだと、荘子先生や益軒先生はおっしゃっているのではないでしょうか?
神社仏閣という祈りと感謝が捧げられる場所にクスノキが多い理由の一つは、もしかすると、この「謝して次へ繋ぐ」というクスノキの生き方が、その場の精神性と共鳴しているからかもしれません。

