二月の花ごよみ -「梅」- 

誰かに話したくなる植物のお話

梅はバラ科の落葉小高木、原産地は中国です。日本には奈良時代に伝わり(実は薬用‼として)、そのため『万葉集』には、梅を詠んだ歌が109首もあり「花と言えば梅」というのが常識でした。しかし平安時代になると「花と言えば桜」と言われるようになり、その地位を譲ることになります。

中国には古くから(清の時代頃)、見頃の樹木と草花が月ごとに並べられ、それぞれの季節を楽しむ「花ごよみ」というものがありました。江戸時代に「花ごよみ」が日本に伝わると、日本版「花ごよみ」も作られました。そして「花ごよみ」は、俳句の歳時記にも取り入れられました。
ちなみに中国版「花ごよみ」2月には「桃」が、日本版では「梅」「椿」が記されています。

江戸時代「花合わせ」という遊びが流行したそうで、その遊びに使うのが「花札」です。花札をご存じでない方でも、一度はご覧になったことがあるかと思います。例えば「松とツル」「モミジとシカ」、そして「梅にウグイス」などは良く知られた絵柄です。

春に先駆けていち早く花を咲かせる「梅」には「春告草」の異名があり、また「ウグイス」は春の訪れを真っ先に告げる鳥ということで「春告鳥」とも呼ばれています。「絵になるような取り合わせ」を形容する言葉として生まれたのが「梅にウグイス」なんです。

「梅にウグイス」という言葉から、梅に止まっている黄緑色の鳥は「ウグイス」と思っている方が多いようなのですが、実際に止まっているのは「ウグイス」ではなく「メジロ」です。

植物園ボランティアのお仲間で「鳥博士」と呼ばれていらっしゃる方にお聞きしたところ、「ウグイスの羽根はどちらかと言うと地味な感じの枯れ葉みたいな色で、幼虫などを食べているため花の蜜は吸わないし、警戒心が強く普段は藪や茂みにひっそりと暮らしていて、梅の花が咲いたからとって、ウグイスが梅の木に止まることはまずありません」というお話しでした。
「ウグイス」と言ったら、うぐいす豆のような「黄緑色」をついつい連想してしまいますが、上記画像の鳥は「メジロ」さんでした(笑)メジロは、梅や椿の花の蜜が大好物で、花が咲くとすぐに梅の花を目指してお食事にやってくるようです。

Kahorin
Kahorin

梅は鳥媒花(鳥に花粉を運んでもらう花)で、大量の蜜をメジロなどに提供する代わりに、花粉を運んでもらいます。

梅は、同じ木の花粉では実を結ばないことが多いです。しかしメジロなどが、花から花へ蜜を求めて移動し梅の花に次々にくちばしを突っ込むことで、異なる梅の木の花粉がめしべに運ばれます。結果として梅は結実し、たくさんの子孫をつくることができるのです。

「梅にウグイス」の勘違いは、ちょっとした笑い話と思って頂ければ幸いです。
いづれにしても私達日本人にとって「梅にウグイス」は、春の訪れを感じさせてくれる「花ごよみ」です。


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