大柴胡湯(だいさいことう)に関するご質問の件

生薬と漢方処方

大柴胡湯は、耳鳴り、肩こりなどを伴う高血圧症や急性胃腸カタル、胆石症をはじめ、心療内科や皮膚科で扱う疾患に対する作用、また近年ではメタボリックシンドロームなど非常に応用範囲の広い漢方処方の1つです。
出典は、2世紀末の中国・後漢代の医師、張仲景先生が著した「傷寒論」(太陽病中篇:生薬の大黄が含まれていない処方)、「金匱要略」(生薬の大黄が含まれている処方)です。

下記の通リ、現在は大黄を含む8種類の生薬で構成されており、柴胡を君薬とし、小柴胡湯と比べ実証に近いイメージの病態に適応する処方という意味で、大柴胡湯と名付けられました。
しかし、便通の状態などにより大黄の含まれていない7種類の生薬で構成された処方が利用されることもあり、この場合、大柴胡湯去大黄と呼んで区別します。

セミナー内でもご説明しましたが、中医学的に大柴胡湯は『少陽陽明合病(表証でも裏証でもない証と裏実熱の証)、肝鬱化火(肝気うっ血が熱証を帯びたもの)、胃気上逆』に対する処方で、小柴胡湯から人参と甘草を除き大黄・枳実・芍薬を加えた組成となっていますので、少陽病に用いる小柴胡湯と、陽明病に用いる小承気湯を加減して合わせた処方と考えられます。
あるいは以前にもお話ししました四逆散に、黄芩・半夏・生姜・大黄を加えた処方とも言えます。

大柴胡湯は実証&熱証タイプに用いる処方ですので、どちらかというと虚を補う人参・甘草(小柴胡湯には含まれています)は必要ないことから、大柴胡湯にはあえて配合されていないという点も、本当に良く考えられた処方のように思います。やはり、先人は凄かった!です。

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