リナロールとNa+(ナトリウムイオン)チャネル

アロマテラピー

今年2026年の薬剤師国家試験に、興味深い問題が出題されていましたので、ご紹介します。

リドカインの局所麻酔作用の機序はどれか?

1 電位依存性 Na+ チャネルの遮断
2 電位依存性 Ca2+ チャネルの遮断
3 電位依存性 K+ チャネルの活性化
4 ヒスタミン H1受容体の遮断
5 オピオイド μ 受容体の刺激

何のことか、さっぱり分からないかもしれません(薬剤師の皆さまには、もちろん簡単です!)が、まずは「リドカイン」とは?リドカインの名前は知らなくても、歯科の治療で、歯ぐきに直接注射して歯の周囲の感覚を一時的に麻痺させる麻酔薬のことは、ほとんどの方がご存知ではないでしょうか?あのお薬が、リドカイン(商品名:キシロカインなど)です。

Kahorin
Kahorin

リドカインは速効性があり、麻酔効果も1~2時間持続します。比較的副作用は少なく、患者さまに優しい麻酔薬として約80年にわたって世界中で使われてきた実績のあるお薬です。またアレルギー反応も出にくく、ほとんどの患者さまに適応できる安全性の高い麻酔薬の一つです。

近年、より効きが早くしっかり効くアルチカイン(セプトカイン)のような、日本では2024年9月に承認されたばかりの新しいタイプの麻酔薬もありますが、リドカインは、今のところ最も一般的に使用される局所麻酔薬で、幅広い歯科治療に適しています。


ところで、ラベンダー精油に多く含まれているモノテルペンアルコール類のリナロールには抗不安作用、局所的な麻酔作用や鎮痛・鎮静作用があることは広く知られていますが、そのメカニズムはまだ完全には解明されていません。
とは言え、2010年頃の研究で、リナロールの皮膚で発揮する局所麻酔作用は歯科で使われる「リドカイン」などの麻酔薬と似た作用機序を持っているのでは?という興味深い論文が発表されました。

痛みを感じるメカニズムとしてこれまでに分かっていることの1つに、神経細胞の表面にある「Na+チャネル」という特殊な通り道(ゲート)が開き、ナトリウムイオン(Na⁺)が細胞内に流れ込み、これにより電気信号(活動電位)が生まれ、痛みの情報が脳に伝わることで、私達が「痛い!」と感じることは証明されています。
薬剤師国家試験でも出題されている通リ、リドカインの作用機序は、注射や表面麻酔をすることで、Na+チャネルと呼ばれる特殊な通り道(ゲート)に物理的に強力な「蓋」をして、その通り道を塞ぎます。その結果、局所麻酔としての効果により痛みを感じなくなるのです。つまり特殊な通り道を遮断(ブロック)すれば、痛みを感じない・感じにくくなるというわけです。

ということで
(^^♪ 上記の問題の正解: 1 電位依存性 Na+ チャネルの遮断 でした。

約15年前の研究では、『ラベンダー精油に多く含まれているリナロールにも、リドカインと同様に「Na+チャネル」という特殊な通り道(ゲート)を遮断する作用があり、痛みの情報が脳に伝わらず、結果的に局所的な麻酔作用を表すのでは?』という仮説が発表されました。

医療用のリドカインなどに比べますと、実際のところ、リナロールの局所麻酔作用はマイルドで作用持続時間も短めですが、「化学合成された麻酔薬リドカインと天然成分リナロールが、分子レベルで同じようなメカニズム(Na+チャネルの遮断)を持っているかもしれない」ということに関しては、驚くべきポイントではないでしょうか?

なお、最近のリナロールの研究論文によりますと「Na+チャネルの遮断」説の他に、「Ca2+ チャネルの遮断」(上記の薬剤師国家試験の選択肢の2です!)説も発表されています。

また、ラベンダー(Lavandula angustifolia)精油のもう一つの主成分とも言われる「酢酸リナリル」に関しても、作用やメカニズムなど詳細が徐々に分かってきました。そのお話しは、別のBlog記事でお伝えします。

今後も、アロマテラピーの精油に関して、新しい情報など分かりやすくお伝えしていく予定ですので、どうぞお楽しみに。

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