京都府立植物園内の親鸞聖人ゆかりの「梅護寺数珠掛桜」が、満開です。原木は新潟県阿賀野市小島「梅護寺」境内にあり、国の天然記念物に指定されています。
承元元年(1207年)、親鸞聖人が越後の国(現在の新潟県)へ流罪となった際、念仏布教のため梅護寺付近に滞在されました。その際、聖人が手に持っていた数珠を桜の枝にかけ「私の教えに誤りがなければ、この桜は数珠のようになるだろう」と説法したと伝えられています。すると、その桜は毎年、数珠の房のように花が連なって咲くようになったと言われています。
これが「数珠掛桜」の名前の由来です。

数珠掛桜は菊咲きのサトザクラで、植物学的にも珍しく、花びらの数は60~90枚と非常に多いのが特徴です。花色は蕾の頃は濃紅色なのですが、開花するにつれて淡い紅色へと変化します。花は二段咲きするものもあり、房状に長く垂れ下がり、若葉は黄緑色で花と同時に展開します。

ところで、「越後七不思議」をご存知でしょうか?
親鸞聖人は流罪となった際、約7年間この地で過ごし、越後の人々に溶け込みながら、出会う人一人ひとりに熱心に教えを説いただけでなく、数々の奇跡・伝説を残しています。
「数珠掛桜」は越後七不思議の1つなのですが、他には「八房の梅」、「三度栗」「片葉の芦」など、親鸞聖人の教えが広まった越後ならではの人々の信仰心と自然への驚異が結びついた興味深い伝説として、現在も語り継がれています。
なお、6月の観察会で、越後七不思議のお話しを少しさせて頂くかもしれません。

越後七不思議に代表されるように、親鸞聖人にまつわる伝説の多くは、民衆にとって身近な植物の珍しい現象と結びつけられています。親鸞聖人の教えは文字が読めない人々や社会的に弱い立場の人々にも理解しやすく、ご自身の流罪という困難な状況にもかかわらず、親鸞聖人は人々に希望を与え続けました。その姿は、苦しい生活を送る人々にとって、暗闇の中の光のように映ったかもしれません。