中学や高校時代に古典で学んだ有名な「平家物語」の冒頭
祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり
沙羅双樹の花の色 盛者必衰の理をあらはす
沙羅双樹とは、インドなどに生育するフタバガキ科の熱帯性木本ですが、残念ながら日本の気候風土には合わないようです。
しかし仏教の世界では沙羅双樹はとても象徴的な樹木ですので、日本では、沙羅双樹の代わりに、全く別種ではありますがツバキ科の『ナツツバキ』(↑白い花をつけています)、別名シャラノキと呼ばれている樹木が寺院などに植えられています。
平家物語の作者は不詳、おそらく鎌倉時代に書かれたのでは?と考えられています。
実は平家物語には、内容の異なるいくつかのバージョンが存在し、おおよそ「読み物系」と「語り系」に分かれるそうです。現代まで残っている平家物語は主に「語り系」で、盲目の琵琶法師が、琵琶を弾きながら、人々に語って聞かせた物語なのです。
一般的に、物語は書物で読むものですが、耳で聞く物語、これは平家物語が繰り広げる独特の世界です。
ナツツバキの花を良く観察しますと、花弁は透けるように薄く、花弁の縁には細かいギザギザが入っています。(ほとんどのヤブツバキの花弁にはギザギザがありません。もちろん例外はありますが・・・)
そして常緑樹の一般的なツバキとの大きな違いは、ナツツバキは一日花で、朝に咲き夕方には散ってしまいます。白い花が落ちると徐々に褐色に変わっていく様子を「盛者必衰の理をあらはす」つまり盛者もいつかは衰えていくことに例えたものなのでしょうか?
あざやかな緑の葉に、清楚で可憐、そして仏教の無常観を秘めた白いナツツバキの花はとても美しく、京都でも6月に見頃を迎えます。
京都市内で「ナツツバキ」の名所と言えば、もちろん妙心寺さんです。
そして、平家物語にゆかりのある大原にある寂光院さんも、kahorinのおススメです。寂光院は、平家滅亡後、平家の娘である建礼門院徳子さまが隠れ住んだ地として知られています。観光される方もさほど多くないようですので、ゆっくりとナツツバキを鑑賞できるのでは?と思います。