生薬三品分類(古代生薬分類法)

生薬と漢方処方

中国、後漢の時代に最初の薬物書『神農本草経』が著されました。その書物の中に記載されている365種の生薬は、ざっくりですが上品、中品、下品の三種類に分類され(上品はジョウホンと読みます)、その概念は現代でも生き続けています。

「上品」が良い薬で、「下品」は良くない薬なんですか?


そう思われがちですが、実は違うんです。
生薬は必要に応じて、使い分けなければいけません。ちなみに「上品」→「中品」→「下品」の順に薬の効き目は強く&シャープになります。

一番大事なポイントは「作用の強弱ではなくて、副作用が出るか出ないか」で、先人は生薬を3つのランクに分類したという点です。

病気を治す力が強い薬は当然副作用も強く出る薬と考えて、薬としてはランクが一番低い「下品」に分類されました。
逆に「上品」の生薬の効果はマイルドですが、長期間服用しても副作用がほとんど起こらない生薬のグループになります。

つまり「上品」は不老長寿のための養生薬、「中品」は新陳代謝を高めて健康維持に役立つ生薬、「下品」は急性病などの治療効果は大きいけれども、不要に服用を続けると、かえって副作用により体に害を及ぼす生薬のグループに分けられました。

「上品」の代表生薬:人参・地黄・竜眼肉・五味子・大棗・麦門冬・朮など
「中品」の代表生薬:当帰・芍薬・麻黄・葛根・乾姜・知母など
「下品」の代表生薬:大黄・半夏・附子・桔梗・桃仁など

更に『神農本草経』の中で興味深いのは、「下品」を使用する際には、「下品」の副作用や作用を軽減する作用を持つ生薬を一緒に配合するなどして薬効を調節する方法が詳しく記されています。

そして「下品」を使用する際には最初は米粒程度の量から始め、病気が治ればすぐに治療を中止、一方治らなければ2倍にし、症状に応じて適宜増減すると良いと記され、だらだらと薬を飲み続けることを避けるように注意喚起を呼びかけています。

このように『神農本草経』の内容は、現在の西洋医学にも通じる内容で、漢方の世界は2,000年以上も前にほぼ完成⁉していたように思います。先人、恐るべし

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