下痢のご相談でおススメした漢方処方と山嵐瘴気(さんらいしょうき)

生薬と漢方処方

血液検査や超音波検査、大腸カメラ検査で異常が見つからず、消化器内科の先生から「特に問題はありません」と診断されたにも関わらず、引き続き下痢で困っている患者さまから、漢方薬で何とか改善できないかとご相談されました。

そもそも、下痢症状を起こす原因には、いくつかあります。また下痢を継続する時期で分けますと、一般的に3週間以内の下痢は「急性下痢」、それ以上続く下痢は「慢性下痢」と呼ばれています。慢性下痢にはストレスからくる神経性のもの、全身的な病気の一症状、または健康食品を含む薬物等の副作用による腸内の炎症など、さまざまな原因が考えられます。

Kahorin
Kahorin

宋代(960~1279年)の医書『和剤局方』に平胃散という処方があります。

平胃散が生まれた背景を知ると、平胃散がどんな方に適しているかよく理解できると思います。なお詳細は、9月30日(土)に開催します漢方勉強会で、お話ししますね。

ちなみに、今回の記事のタイトル、山嵐瘴気(さんらいしょうき)、気になりますよね。では、平胃散と深い関係ありますので、チモ博士にご説明をお願いすることにしましょう。

中国 江南地方
チモ博士
チモ博士

中国の古代の首都は、比較的冷涼で乾燥した地域である黄河流域の洛陽や長安が中心でした。しかし南宋の時代(1127-1279年)、北方の金に都を奪われた宋王朝は、江南に逃れて臨安(現在の杭州)を首都としました。臨安は長江下流域の湖沼地帯に位置する都市で、豊かな水資源と肥沃な土地に恵まれていましたが、一方で高温多湿で疫病が多発する地方でもありました。

山嵐瘴気:山嵐は山中の霧気を指す。瘴気は南方の山林の中で生じる湿熱性の蒸気。山嵐瘴気は南方の山林中の濕熱が蒸鬱して生じる一種の病邪をいう。(改訂版中医基本用語辞典;東洋学術出版社より引用)

霧など湿度の高い蒸気(→湿邪になります)が蔓延していた長江流域以南の山岳地帯に住んでいる人々の間で、よく下痢が起こっていたようです。
さらに臨安は温暖で湿潤な地域であり、蚊やハエなどの媒介動物が生息する環境に適していたため、マラリアやデング熱などの蚊媒介性疾患も流行したという記録が残っています。

中医学では、自然界には風・暑・火・湿・燥・寒の六つの『』が存在するという考えがあり、これらが病気の原因に変化した時、それぞれ風邪・暑邪・火邪・湿邪・燥邪・寒邪と呼ばれ、そのうちの湿邪は、自然界の湿という気が体内に侵入し病気や不快な症状を引き起こします。なお「邪」とは、体に良くないもの・いらないものという意味です。

湿邪の影響が強く出ますと、水(湿気)に関係する不調、例えば、むくみ・全身倦怠感・食欲不振・下痢・頭重感・頭痛・関節痛・手足のだるさなどの症状が出やすくなります。

また湿邪は、身体だけでなく心にも影響を与えます。普段健康な方でも、気分がのらず、些細なことで落ち込みやすくなる傾向があります。最近、仕事への意欲がわかない、やる気が出ない……という方は、もしかすると猛暑で摂取し過ぎた水分の影響を受けている可能性があります。

今回のご相談者さまは、湿邪の影響を受けたために五臓六腑の脾胃(消化器系)の低下があることで下痢症状が続いていらっしゃったようでしたので、脾胃の湿邪を除去し、胃腸機能を正常な状態に戻す作用をもつ漢方処方平胃散をおススメしてみました。現在は、下痢症状、すっかり改善されたようで本当に良かったです。
服用のコツなどもありますので、あとは漢方勉強会でお話しします。

まお、漢方勉強会にご興味のある方は、お気軽にこちらまでお問い合わせください。

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