『春の妖精』を目覚めさせるオウレン属(Coptis)

生薬と漢方処方

早春のひとときだけ地上部に葉を出し、花を咲かせたかと思うと夏前には跡形もなく地上から姿を消す植物、例えばカタクリ、セツブンソウ、イチリンソウ、ニリンソウ、フクジュソウ、エゾエンゴサク、ツルネコノメソウなどなど、これらの植物はスプリング・エフェメラル(Spring ephemeral)=日本語では「春の妖精」と呼ばれています。

今回は、「春の妖精」植物よりも早く、薄暗くやや湿った林床に真っ先に花を咲かせて春を告げてくれるオウレンのお話しです。
(^^♪ 「オウレン」? どこかで聞いたことがあると思われた皆様、実は、昨年の朝ドラ「らんまん」の中で、バイカオウレンが登場していました。

ちなみにオウレン属は、花が終わった夏以降も年間を通して地上に葉をつけているため「春の妖精」には分類されていません。でも、「春の妖精」グループがまだまだ土の中で眠っている時期から早々に花を咲かせるオウレン属は春の到来を待ちきれないようで、「春の妖精の皆様、そろそろ、お目覚めの頃ですよ!」と声をかけているように思えてしまいます。

チモ博士
チモ博士

オウレンはキンポウゲ科オウレン属の日本固有の多年草で、オウレンCoptis japonicaには3つの変種があり、分布地と葉のつき方によって分類されます。
※ キクバオウレン:(1回)3出複葉
※ セリバオウレン:2回3出複葉
※ コセリバオウレン:3回3出複葉

これらの中で薬用・生薬として用いられるのは、キクバオウレンとセリバオウレンです。
ちなみに、「らんまん」で紹介されていた植物学者牧野博士の愛した植物「バイカオウレン」は薬用には使用されませんが、オウレン属のなかでもとりわけ早咲きで、1月頃から観察できます。

オウレン属を含むキンポウゲ科植物は古いタイプの植物と考えられており、キクバオウレンやセリバオウレンの花や葉を良く観察しますと、ちょっと不思議なくらい色々と面白い形態をしています。

次回の植物観察会(2月下旬から3月上旬の予定です)では、オウレン属の観察も出来ると、おそらく皆様に楽しんで頂けるのでは?と考えています。
オウレン(生薬名:黄連)の作用に関しましても、植物観察をすることでさらに理解しやすいと思います。観察会、どうぞお楽しみに!




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